月刊アイソス 2015年12月号掲載

ISO9001(2015 年版)改正の
ポイント解説と統合マニュアル改定文例
      
第3回 統合マニュアルの作成
 
-リーダーシップ、リスク及び機会への取組み-
 
 
  今回は、「リーダーシップ」と「計画プロセス」の中の「リスク及び機会への取組み」を紹介します。
 
*  リーダーシップ
 ISO9001:2015年版では、経営者の責任 というタイトルが リーダーシップに変わりました。また、管理責任者という役割に関する言及も削除されました。この変更はISO14001も同じです。
 これは、経営者がマネジメントシステムの活動が実施されていることを確実にするのではなく、主要な活動に取り組んでいることを実証することを意味しています。
 管理責任者という役割に関する記述の削除は、マネジメントシステムが内部の独立した専任者によって運用されているのではなく、日常的なビジネスの運用に組み込まれていることを強調しています。
 トップマネジメントの役割は大きく分けて、「目的と方向性を決めること」と「社員が目標を達成できる条件を整備すること」です。
 一方、マネージャ-即ち、部門長やISO事務局の役割は、目標を設定し、意図したアウトプットを出すことです。
 
   
*  統合方針
 
 最初に方針を統合すべきかどうかを考えて見ます。組織には企業理念又はミッションがあって、ここからビジョンが作成され、ビジョンを達成するための中期的な戦略課題として経営方針が出てきます。
その経営方針の中には、品質方針、環境方針、労働安全方針・・・等が出てくるのです。
 ここでの検討事項は、これらを、一体化した方がよいのかどうか、ということです。また、一体化するとした場合どのようにしたらよいかという問題だということです。
 一体化のメリットは、方針が一つの流れとして展開できる。もともと事業プロセスを実行する部門では、一体となった活動を行っているので効率的なはずです。一体化のデメリットは、品質管理、環境管理といった個別の機能別管理組織になっている場合、機能別管理がやりにくいということです。特に化学工場のように、リスク管理を要する重要な環境問題が潜在化している場合は、一体化したために方針が薄められて伝達されるという弊害が出るかも知れません。
 しかし、機能別管理体制がとられていない組織では、一体化した方が効率的でしょう。

 目標設定のための枠組みを与える方法としては、バランススコアカードの考え方を活用する方法があります。

事業活動の評価指標する視点:
 ①財務の視点 (株主をいかに理解するか)
 ②顧客の視点 (顧客をいかに理解するか)
 ③業務の視点 (成功のためにはどのような業務に優れていなければならないか)
 ④学習と成長の視点 (変化し、向上し続けていくためにはどうすればよいか)

 ここで、上位にあるものは短期的な結果、下位になるほど長期的な結果を示す指標となり、これらのバランスに配慮しながら、部門目標→社員のアクションプランへと展開していきます。
 しかし、利益率等の財務の視点の結果は、景気等の改善活動以外の外乱要因が大きく改善の達成度を評価する指標として不適切です。
 そこで、②から④の3つの視点に環境を加えた、4つの視点で枠組みを設定します。
 
 
*  リスク及び機会への取組み
 
ISO/FDIS9001 6.1 リスク及び機会への取組み
6.1.1 品質マネジメントシステム(QMS)の計画を策定するとき、組織は4.1に規定する課題及び4.2に規定する要求事項を考慮し、次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定しなければならない。
a) QMSがその意図した結果を達成できるという確認を与える。
b) 望ましい影響を増大する。
c) 望ましくない影響を防止又は低減する
d) 改善を達成する。
 
 リスクとは、用語の定義では「不確かさの影響」と定義されています。
 影響は、一般的には好ましくない方法を考えがちですが、正しくは好ましい方向、好ましくない方法の両方があります。これは、先に策定されたISO31000規格 リスクマネジメントとの関連です。
例えば、為替変動というリスクを考えた場合、上昇する場合、下降する場合、両方のリスクが有ります。
 しかし、品質マネジメントシステムや環境マネジメントシステムで考慮するリスクは。好ましくない方向だけを考慮すれば良いと思います。
 リスクレベルの評価は、一般的には評価基準を作って 結果の重大性?発生可能性 の点数で評価します。しかし、必ずしも、そうしなければならないという訳ではありません。

FDIS附属書 A.4 リスクに基づく考え方
 6.1 は組織がリスクへの取組を計画しなければならないことを想定しているが、リスクマネジメントのための厳密な方法又は文書化したリスクマネジメントプロセスに対する要求事項はない。
 
 即ち、リスクレベルの評価は定性的でよいということです。
 図表2は、定性的なリスクレベルの評価で、高、中、低 の段階で判断しています。
 リスクレベルが一定以上の場合は、回避、低減、共有等の取組みをしなければなりません。
  
図表2 リスクレベルに評価と対応策
 ここで、リスクの共有とは、複数の他者との合意に基づいてリスクを分散すること。例えば、損害保険への加入などを指します。リスクの保有とは、十分な情報を得たうえでの決定により、あえて対策をせずに、そのリスクを保有するとこです。

 リスクを考慮するとき、4.1注記2、注記3を参考にするとよい。図表3はこれらを考慮した一般的なリスクを、私が個人的に記載したものです。
しかし、ここに上げた全ての領域についてリスクを決定しなければならないわけではなく、4.1組織の状況 で決定した課題に関連するものに限定すればよいです。
 
図表3 考慮するリスクの範囲と事例
 
 一方、機会とは「有利となる何かをもたらす状況」のことをいい、不確かさを考慮する必要はありません。例としては、新たな慣行の採用、新製品の開発、新たは依頼人への取組、パートナーシップの構築、新たな技術の採用、有益な環境影響を及ぼす取組み等があります。
 
 
*  機会の観点から環境側面を洗い出す
 製造業や建設業では、環境側面の洗い出しと評価は、プロセス法で洗い出しスコアリングで評価する方法が一般的に用いられてきた。この方法はリスクの観点から環境側面を決定することになります。
 「ISO/FDIS14001 6.1.2 著しい環境側面」では、「ライフサイクル視点を考慮し、組織の活動、製品及びサービスについて、環境側面及び環境影響を特定しなければならない。」と要求しています。
ライフサイクル視点を考慮した環境側面は、有益な影響を及ぼす環境側面が中心となるので、リスクではなく機会から環境側面を洗い出す方が合理的です。
 手法としては、本来業務の機能よりライフサイクル視点を考慮した有益な環境影響を及ぼす環境側面を洗い出す。
 以下に、ISOP工業におけるライフサイクル視点を考慮した有益な環境影響を及ぼす環境側面の決定方法を紹介します。
 
 
                  リ ン ク
     
            ISO9001/14001 2015年版移行コンサルのご案内
  
(株)ISOP工業 統合(業務)マニュアル ダウンロード のページ
   
ISO9001:2015版移行内部監査員チェックリストサンプル
 前のページ  ■  次のページ 
 
目 次
 
Home